先日、私の住む町から車で2時間ほどの気仙沼市(宮城県)で講演をしました。ご存知のように気仙沼は4年前の3月11日の大津波で被災した町であります。講演の対象は60代から80代の高齢者でありますから、家族や親戚に津波の犠牲者がおり、心の傷が深く、今でも睡眠にも大きな問題を抱えています。
被災地での講演では始めに、大きな災害にあったのだからよく眠れないのは仕方のないことで、無理に眠ろうとせず、眠くなったら眠ればいいと話すことにしています。そうは言っても眠れなくて人一倍苦しんでいる人達ですから、眠りのしくみについて丁寧に説明します。特に、夜になると眠くなるのは、私たちの体内に時計があるからで、この体内時計の昼夜のリズムに逆らわずに、決まった時刻に起床して朝の光を浴びることが大切であることなどを強調します。
私自身も大震災を経験した者として、今後も被災者の心に寄り添った講演を心がけたいと思っております。
社会の夜型化に伴い、子ども達の夜更しの問題が提起されてから久しいのですが、一向に改善されていないように思われます。私は宮城県公立高校教員を定年退職した平成14年から、地域の子ども達に講演による睡眠指導を行ってきました。講演では高校在職中に行っていたイエバエの行動研究を基に、生物時計の話から睡眠のしくみや働きを解説し、毎朝決まった時刻に起床することが何より大事だと訴えています。
私は講演活動を始めてから睡眠について学ぶ機会を求めていました。日本睡眠学会に出席した折に、滋賀医科大学の睡眠学講座が開設されていることを知り、睡眠健康指導士上級に挑戦し幸い認定書をいただきました。日本の著名な先生方から学んだ講座の内容は早速講演活動に生かしております。子ども達が本来の基本的な生活リズムを身に付け心身ともにすこやかに成長することを願って、今後とも睡眠指導を続けていきたいと思います。
上級睡眠健康指導士
元宮城県公立高校長
理学博士 相澤 信